石渡伸太郎(TEN SENSE)のMMAで健康になる方法 #1

プロ総合格闘家として10年以上のキャリアを誇り、現在は第2代キング・オブ・パンクラスのタイトルを保持しRIZINでも活躍中の石渡。“激闘派”としてファンの記憶に残る熱い試合を繰り広げる一方、恵比寿にあるTEN SENSEのワークアウト部門の代表としても活動している。今回はTEN SENSEワークアウト代表、そしてトレーナーとしての部分にスポットを当て、総合格闘技と健康について語ってもらった。石渡の意外(?)な一面と総合格闘技の新しい見方は必見!

——石渡選手はTENSENSE(テンセンス)では、どのような立場で指導されているのですか?

「ワークアウト部門の代表を務めさせてもらっていて、そのほかにカフェで出す食事メニューにも関わったり全体的に見ている形です。ジムではキックボクシングとパーソナルトレーニングを中心に指導していて、その他にもヨガのクラスも設けています」

——TENSENSEはジムだけでなく、カフェや美容エリアも併設された複合施設です。一般的なジムとは全く違うスタイルですが、いつからこういうことをやりたいと思っていたのですか?

「以前から自分が総合格闘技を通じて学んできたことを一般の人たちにも伝えたいという想いがあって、アイディアそのものは一年ほど前くらいから温めていました。当初は現役を引退してからやろうと思っていたのですが、ちょうど僕のやりたいことに賛同・協力してくださる方がいたので、今年9月からTENSENSEをスタートすることなりました」

ビュティーサロンも併設され美しさをトータルでプロデュース。

——石渡選手はこれまで指導歴やトレーナー歴はあるのですか?

「実は21〜22歳の頃から加圧トレーニングのトレーナーの仕事を始めて、そのあともずっとパーソナルトレーナーとして活動していたんですよ。現役中は言うことじゃないかなと思って大々的に公表はしていなかったのですが」

——ファイターとして活躍する一方、トレーナーとしても活躍されていたんですね。

「僕はトレーナーなんて偉そうなものではなくて(笑)、あくまでトレーニングの先輩です。実際の指導でも『僕はトレーニングの先生ではなくてトレーニングの先輩です。みなさんの辛いことは経験しています』という言い方をしています。。僕自身、人に教えるのは好きですし、自分の中には総合格闘技を通じ分かったことがあるので、それを一般の人たちにも伝えたいということが一番です」

——TENSENSEは「「美・食・体で美しさを追及する」という斬新なコンセプトのジムだと思うのですが、何がきっかけでこういったアイディアが浮かんできたのですか?

「僕自身、格闘家として必ずと言っていいほど練習で怪我をしていて、怪我をせずに試合をしたことの方が少ないくらいの選手だったんです。例えば試合が決まって一日三部練のハードな練習をすると、大きな怪我をしてしまって、一週間近く練習を休まないといけなくなる。そして怪我を引きずったまま試合当日を迎える。そんなことの繰り返しでした。練習すればするほど怪我して調子を悪くしてしまうので、最終的には『俺は練習しない方が強くなるんじゃないか?』という結論に至ったんですよ。練習しなかったら怪我もしないし、身体を休める分、コンディションが良くなるから(苦笑)」

——言われてみればそうですね…。

「確かに練習を休んでいる方が身体も動くし、出来なかった動きが出来たりするんで、練習を休んだ方が強かったと思います(笑)。その中で僕自身、色んなトレーナーさんの指導を受けて、正しい身体の使い方を覚えて、食事を意識するようになって。年齢も30歳を過ぎたんですけど、若い頃と比べても今が一番練習できる状態になりましたね」

——石渡選手は何を変えたことで、怪我をしなくなったのですか?

「一番はボクシングの練習を始めたことが大きいですね。細かいことを言うときりがないのですが、強いパンチを打つために必要なものは筋肉やパワーではなくて、正しいフォームでパンチを打つことなんですね。そのためには自分の身体を正しく使う必要があって、ボクシングの練習をやることで正しい身体の使い方が分かってきました。ここで不思議なことがあって、怪我でボクシングの練習しかしていなかったのに、組み技や寝技が強くなっていたんですよ」

——ボクシングをやって寝技が強くなる…ですか?

「はい。それが正しい身体の使い方につながっていて、僕はボクシングをやることで正しい身体の使い方を覚えて、それが組み技や寝技にも活かされたのだと思います。僕の頭の中にはずっと理想の動きがあって、でも自分の身体を思い通りに動かせないから、その動きが出来ないという状態だったんです。でもボクシングで正しい身体の使い方を覚えたことで、その問題が解消されて、自分の理想の動きが出来るようになりました。以前は正しく身体を使えていないのに強引に自分の理想の動きに合わせようとするから身体に負担がかかって、それが怪我につながっていたんですね。でもそれも徐々になくなってきて、結果的に怪我もしなくなりました。正しい身体の使い方を覚えることは競技動作の向上や怪我の予防などすべてにつながっているんだなと思います」

——食事に関してはどんなことを意識しているのですか?

「僕は太りやすい体質なので『何を何g摂ればいい』や『このサプリメントを飲めばどんな効果がある』など自分で勉強したり、人に教わったりしながら知識を増やしていきました。で、栄養のバランスがよくなると、精神的にも動揺しなくなって……変な話、毎日が幸せでハッピーなんですよ(笑)。逆に栄養が足りていないと自覚症状が出るようになって、例えばミネラルが欠如しているなと思う時にはイライラしたりもします。先ほどの正しい身体の使い方と同じように総合格闘技をやってきたことで、僕が学んだ色んな知識や経験をTENSENSEで一般の人たちに活用してもらいたいなと思っています」

カフェスペースではシェイクやスムージーでプロテインも手軽に補給できます。

——どんな目的の会員さんが多いのですか?

「8割〜9割は女性で体力向上や身体のシェイプが目的の方が多いですね。やはり最初は殴る・蹴るという行為=難しいという印象を持たれてしまうのですが、いざやってみると楽しいと言ってもらえることが多いですね」

——TENSENSEで指導していることと他のエクササイズの一番の違いはなんですか?

「一般的にエクササイズはキツいことをやって心拍数を上げるのが基本なんですが。僕は指導の時に『これからキツいことをやりますが、キツいと感じない方法を探してください』と言います。運動をすることで逆に身体を痛めるケースも多くあって、それは正しく身体を使うことよりも身体に負担をかけることを目的にしているからで、それが怪我につながっていることが多いんですよ。例えばサンドバックやミットを連打する時、身体を疲れさせる・心拍数を上げたいからと言って、崩れたフォームで首や肩に力が入ったままパンチを連打していると、それは身体に対して大きな負担をかけることになりますよね。逆に余計なところに力が入っておらず、ちゃんと身体全身を使って正しいフォームでパンチを打っていれば、身体に余計な負担がかからない分、楽に身体を動かすことが出来て疲労を感じにくいはずなんです」

——ああ…そこにつながっていくんですね。

「はい。例えば僕もミット打ちをやっていて正しいフォームで右ストレートが打てていると思った時、ミットを終えた直後に鏡を見ると左肩に比べて右肩の位置が下がっていることがあります。これは正しく身体を使えていて、肩の余計な力が抜けて筋肉がほぐれているのだと思います。だから正しく身体を使えていれば、疲労や負担ではなく身体の不調がなくなるんではないかと。実際に会員さんから『肩こりが治った』や『腰痛がなくなった』という声もあります」

——治療やマッサージではなく、運動で身体が良くなるというのは目からうろこですね。

「僕が治療やマッサージを水漏れに例えて話すのですが、怪我=水漏れだとすると、治療は水漏れしているところにバケツを置いて、バケツのサイズを大きくすることだと思うんです。もちろんバケツが大きければ大きいほど床が濡れることはないですが、雨漏りしなくなることはないですよね? 逆に身体の使い方をよくして不調を直すというのは、雨漏りそのものを修理しているというイメージです。もちろん根本から治療できる方もいらっしゃると思いますし、私自身たくさん助けていただきました。しかし原因を全く探らずに同じ事を繰り返せば、不調は残りやすいですよね」

——では身体をシェイプするという部分で格闘技から学ぶことが出来るのはどんなところですか?

「そこは食事が占める部分が大きくて、TENSENSEの2階のカフェスペースでは食事も食べることができようになっています。細かいレシピは担当者に任せているのですが『こういった食材を使って』や『タンパク質は必ず30g以上は入れるようにして』だったり、そういう話をしていますね。会員さんに食事指導するうえで基本にしているのは『しっかりタンパク質を摂りましょう』ということで、一度の食事でタンパク質を30gということで、TENSENSEキッチンでは1食でタンパク質を30g摂れるようにしています。
 普通に日常生活を送っていて、一食でタンパク質を30g摂るというのは難しいんですよ。僕もお昼頃に外を歩いていて、コンビニで菓子パンとコーヒー牛乳を持って並んでいる女性を見たり、つけ麺屋の列に並んでいる男性を見たりして『ちょっと来なさい!』と言いたくなります(笑)」

タンパク質とミネラルを中心にバランスのとれた食事も摂れる。

——思わず指導してしまいたくなるんですね(笑)。

「僕は減量期、コンビニで買うものはゆで卵とバナナくらいしかないですね。街に溢れているものや日本人の食生活を見ていると、それは年齢を重ねれば身体のどこかがおかしくなるだろうなと思ってしまいます」

——意識して食事していないと、それだけ身体に悪いものを口にしてしまっているということですね。

「それは僕が減量中に気づいたことで、一度、減量中にどうしても我慢できなくて、コンビニで好きなもの買って食べてしまったことがあったんです。そうしたら次の日に顔はむくむし、だるくなるし…で、ものすごく体調を崩したんですよ。減量中で食事制限しているから身体が敏感になっていたからだと思うのですが、言い方を変えれば、それだけ身体に悪い影響が出るものが日常的に売られていて、それを口にする機会が多いということですよね。そしてほとんどの人がそれに気づいていないということは、もう身体が麻痺してしまってるんですよ」

——そう聞くと…自分の食生活も考えさせられます(苦笑)。

「でもそれは僕が格闘家として減量という経験をしているからこそ、分かることだと思うんですよね。身体の使い方の話もそうですが、僕はずっと総合格闘技という競技に選手として携わってきて、そこで色々なことを知ることが出来ました。そしてそれは間違いなく一般の人たちにも応用できるものだと思っています」

——総合格闘技は過酷で身体への負担が大きいというイメージがありますが、総合格闘技をやることで健康になるという発想は画期的ですね。

「もちろん僕らのようにトッププロとして競技を続けていればダメージもあるし、怪我はつきものだと思います。でも総合格闘技から一般の人たちに役に立つ部分だけを抽出して、それを実践していけば総合格闘技ほど健康になれるものはないと思っています。それこそ“総合”格闘技という名前の通り、打撃もレスリングも寝技もすべてをやらなければならない。打撃もレスリングも寝技も出来るということは、一つのことに特化した動きではなく、根本的に正しく身体を使うことが出来るからなんですよね。僕がボクシングを練習して寝技が強くなったように全てはつながっているし、総合格闘技をやれば正しい身体の使い方を覚えられると思います」

——こうしてお話を聞いていると石渡選手の中にはもっとたくさんのアイディアがありそうですね。

「はい。アイディアはたくさんあるんですけど、なかなかすべてを実現するのは難しいので、少しずつ…ですね。テンセンスにはジムスペース・カフェスペースに加えて美容スペースもあって、トレーニングと食事だけでなく、そこに美容の要素も絡めていきたいです。食生活が変われば肌も綺麗になるし、爪も綺麗になる。髪にも艶やこしが出てくるので、それは美容という面にも大きなプラスだと思います。まだ僕も現役のファイターとして戦っていますが、テンセンスを通じてこういったことを発信し、総合格闘技の新しい面を伝えて、より多くの人に活用してもらいたいです」

TEN SENSEの詳細はこちらから

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