RIZINバンタム級GP出場が正式発表されたバンタム級キング・オブ・パンクラシストのベルトを巻き続ける、石渡伸太郎。
ニューメキシコ州アルバカーキにあるジャクソンズMMAで海外修行を経験した彼は、その後はサクラメントのチーム・アルファメール、そしてシカゴのイジー・レスリンス、さらにはタイでムエタイの修行を積んできた。
そして、海外修行のあり方も日本でTeam OTOKOGIという基盤を持つことで、変化した。現在の石渡にとって海外での練習は何を意味するのかをインタビュー後編では尋ねた。
──それでも次に行った場所がジャクソンズMMAではなく、アルファメールだったのは?
「それは……ジャクソンズに対する、環境面でのトラウマがあり過ぎたからです(笑)。だったら、違う場所でも練習できるだろうって。それと自分と同じ階級の選手とスパーリングがしたいと思ったのも大きいです。
アルファメールではチャド・メンデス、TJ・ディラショー、ユライア・フェイバー、そしてランス・パーマーと僕の5人でガチ・スパーリングを回していたんです」
──強烈なメンバーです。
「最初は全く相手にされていませんでしたが、ガチ・スパーをやっているうちに認めてもらうようになりました。ユライアは本当にナイスガイで、よくしてもらえましたね。アルファメールは宇野(薫)さんと戦った後(※2012年9月)に行って、自分がどれだけのレベルにあるのか確認できました」
──そこで米国のレベルを把握できたという感じでしょうか。
「だいたいは分かりました。そこで思ったのが、海外での出稽古を繰り返していても、到底彼らには及ばないということでした。向こうで練習してきたこと、考え方を学んで日本で取り入れる。それがTeam OTOKOGIにという形に表れています。各コーチの繋がりという面も含めて。
組み技のコーチと打撃のコーチが、試合の時だけ一緒にいるなんてことはなくなりました。試合が決まった時点で、組み技コーチと打撃コーチと3人でミーティングをして、その方向性を見つけて、見通しを立てることができているので」
──北米での出稽古を経て、チーム・オトコギが誕生した。それからも昨年のイジー・レスリングであり、今年のタイでのムエタイなど海外で練習をしているのは?
「オトコギの練習をすることで、寝技に関しては力も自信もつきました。どれだけ強い相手と戦っても、何をされているのか分からないなんてことはない。ただし、レスリングとなると米国とは全く競技人口も違います。
五輪レスリングでなく、カレッジレスリング。その違いも大きいですし。そこは現状、日本では練習できない。だから、レスリングは米国でやるしかない。カレッジレスリングに関してはイジーのところは定期的に行くしかない。アレに似通ったモノを日本で求めることはできないです」
──つまりMMA全体像としてある程度のモノはオトコギで創り上げることができるので、パーツとして日本にないモノを海外修行に求めているということでしょうか。
「以前は海外に行って、自分を新しくしようとしていました。それが今はこれまでの経験を纏めようと思っています。イジーのところはカレッジレスリングで、タイはヒジやヒザですね。ヒジやヒザはカレッジレスリングと違い、それほど自分の試合で使っている技術ではないですが、一度触れておこうと思いました」
──スタイルが出来上がりつつある中で、海外では技術習得が目当てであったとしても、それがなる練習かどうかは、初見では分からない部分もあるかと思います。
「いや、僕のスタイルはまだまだ出来上がっていないですよ。もっと吸収したい。キャリアの最初は蹴りから入る、ムエタイスタイルだったので以前、使っていたモノを思い出すという意味もありました。
海外にはまだ自分の知らない何かを求めて行くんです(笑)。でも、結局のところ『あぁ、こういうことだったんだ』と再確認できることが多くて。タイに行った時に一流の選手の動きを見て、日本にいてセンチャイ・ムエタイジムで練習させてもらっていることが確認できる。
センチャイ先生はこのことを口を酸っぱくして指導してくれていたんだ──とか気付かされるんです。百聞は一見にしかず。なぜ、あんな動きができるんだっていうことは、実は先生がずっと教えてくれていたんです。イジーに習ったことも『あぁ、植松さんが言っていたのはここのことか』って分かることがありました。」
──これからも現役生活を続けていくうえで、海外出稽古は続けて行く予定でしょうか。
「続けたいです。本音を言えば海外は苦手だから、本当は行きたくない(笑)。毎回、体調を崩しますし。イジーの所に行ったら胃腸炎になり、タイでは気管支炎になりました。体調が悪くなると焦りも大きくなる。
日本にいると何でもないことが、どんどん悪い方に考えて不安になる。でも、強くなるには行くしかないです。海外旅行保険に入って行きます(笑)」
──石渡選手にとって海外出稽古とは?
「う~ん、分からないです。新しいモノを見つけに行くのですが、結果的に知っていることだったという……。ちゃんと理解するってことですかね。国内にいる時は組み技も打撃もフィジカルも、同時にやらないといけない。スケジュールに追っかけまわされることがあります。
それがタイだと、毎日のようにただ蹴り続けているだけ。これが答になっているかどうか分からないですけど、そういう時間って大切だと思います」
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